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朗読

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朝のリレー/生きる

作:谷川俊太郎(たにかわしゅんたろう)
 


 
《この詩について》
 
「朝のリレー」
1968年に発表された作品で、国語の教科書にも採用されており、学校で学んだ(知った)方もいらっしゃるのではないでしょうか?口語自由詩で描かれる様々な国の朝の風景が「世界の人全て繋がっている」「世界平和」を伝えているとも解釈されています。
 
「生きる」
1971年に発表された作品で、2017年には新たに絵本も産まれています(福音館書店)。作者本人はこの詩を「良くできた詩ではなく未完成の詩」と評しており、発表当初(20代)は「書くより生きる方が大切だった」とインタビューで応えられています。「死を含むからこそ『生』のエネルギーが湧く」とのご自身の言葉通り、「今を生きる」という挙動を身近に描く作品です。
 


 
《変・変わる》
 
変わりゆく時間の中で、「変わらない不変的・普遍的」な朝の風景や、生きる事そのものを描く作品を読み・聴き・感じる事で、改めて小さな変化にも気付ける・変化を喜べるようにと願い、愛され続けるこの2編の詩を選ばせて頂きました。
皆様の中で、それぞれの(小さくても)変化を感じて頂けるよう、心を込めて読ませて頂きます。
 

演者は

SHUPLACE ACADEMY 朗読クラス 講師金尾信子

 

全文
 


 
「朝のリレー」
 
カムチャツカの若者が きりんの夢を見ているとき
メキシコの娘は 朝もやの中でバスを待っている
ニューヨークの少女が ほほえみながら寝がえりをうつとき
ローマの少年は 柱頭を染める朝陽にウィンクする
 
この地球では
いつもどこかで朝がはじまっている
 
ぼくらは朝をリレーするのだ
経度から経度へと
そうしていわば交替で地球を守る
眠る前のひととき耳をすますと
どこか遠くで目覚まし時計のベルが鳴ってる
それはあなたの送った朝を
誰かがしっかりと受けとめた証拠なのだ
 


 
「生きる」
 
生きているということ
いま生きているということ
それはのどがかわくということ
木もれ陽がまぶしいということ
ふっと或るメロディを思い出すということ
くしゃみすること
あなたと手をつなぐこと
 
生きているということ
いま生きているということ
それはミニスカート
それはプラネタリウム
それはヨハン・シュトラウス
それはピカソ
それはアルプス
すべての美しいものに出会うということ
そして
かくされた悪を注意深くこばむこと
 
生きているということ
いま生きているということ
泣けるということ
笑えるということ
怒れるということ
自由ということ
 
生きているということ
いま生きているということ
いま遠くで犬が吠えるということ
いま地球が廻っているということ
いまどこかで産声があがるということ
いまどこかで兵士が傷つくということ
いまぶらんこがゆれているということ
いまいまが過ぎてゆくこと
 
生きているということ
いま生きているということ
鳥ははばたくということ
海はとどろくということ
かたつむりははうということ
人は愛するということ
あなたの手のぬくみ
いのちということ
 
etc...

ページ担当:Tae